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暗号資産の税制改正の報道を受けて

2022年8月24日夕方、暗号資産に関する税制改正のニュースを読売新聞がスクープした。

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6436634

 

現行税制において、暗号資産については期末日に時価評価を行い、保有している暗号資産の含み益に対して課税を求めるルールになっている。

改正後は自社で発行する暗号資産については決算日に時価評価を行うことによる含み益課税を繰り延べ、販売した際に利益が確定するため、販売時に課税を行うという変更を予定しているらしい。

 

この税制改正そのものは以下の点において画期的だと考えている。

(1)これまでは保有している暗号資産については、その保有目的を考慮することなく、すべて時価評価を行い、含み益課税を行っていた。しかし、当該変更により、時価評価課税の対象外とするケースが自社がプロダクトの一定程度のオーナーシップを保有しているケースなど(自社に限定はされているものの)保有目的が考慮されることになった。。

(2)暗号資産の販売の経済的実態は資金調達と捉えられることが多いが、一方で、期末時の時価評価課税を免除するとともに、販売時にその売却利益に課税されることになった。販売利益に課税を求めるということは、つまり、暗号資産の発行は資金調達ではなく、顧客に対するトークンの販売取引として整理されることになったと考えられる。

 

(1)については保有区分を考慮して、その実態を踏まえて課税関係を考えるという建設的な議論を行える下地が整ったという点で非常に大きな一歩であると考えられる。

他方で、(2)については、暗号資産で資金を調達する場合、課税をされることが明確化された。つまり、株式や銀行のローンで資金調達をした場合、課税されない一方で、暗号資産で資金調達すると法人税率約30%相当分が課税され、販売したトークンのうち約70%しか手許に残らないことなる。資金調達の方法によって歩留率70%の資金調達方法と、歩留率100%の資金調達方法があった場合、起業家としてはどちらを選択するべきか、答えはシンプルな気もする。

 

以上が本件に関する個人的な見解だが、さて今後のweb3の制度面の展開はどうなるであろうか?

(僕が公認会計士だからというわけではないが)個人的には今後、web3の規制問題で問題が指摘されてこなかった会計上のイシューがいよいよ問題になってくるものであると考える。

これまで多くを語られることがなかった会計のイシューだが、その実態を見てみると、、残念ながら暗号資産の発行に関するルールである会計基準が全く未整備である。膝から崩れるくらい手が付けれていない。

まず暗号資産の発行に関する経済的実態を資金調達と捉えるのか?顧客への財の販売と捉えるのか?

今回の税制改正により税務上は顧客への財の販売と捉える結論を出しそうな流れだ。それに関する税の議論は上記の通りだが、会計では全く別の問題にぶち当たることになる。

税制が選択した「顧客への財の販売」を処理する会計基準(収益認識基準)の中に、明確に「資金決済法に規定する暗号資産は対象外とする」と記載されてしまっているのである。しかも収益認識基準が施行されたのは2021年4月1日。ごく最近のことである。

税法の整理は顧客への財の販売。会計は顧客への財の販売をルール上除外している。構造上そのようになっている。

この税法と会計の解釈が異なることによる帰結は、、、暗号資産を発行して、自社が保有しているトークンについては時価評価課税を免除されたとしても、会計基準に則った会計処理をできないということである。

会計基準に則った会計処理ができないと何が問題になるかというと、上場会社や上場(IPO)を目指す会社は決算を締められない。投資家に決算報告できない。監査法人が監査を受けてくれない。などなど。なかなか簡単な話ではなそうだ。

また、先日ナナメウエ社がIEOの検討をしていることを発表するなど、今後IEOが増えていくという噂もチラホラ聞く。IEOとは暗号資産交換業者を通じて暗号資産を販売することであるが、これに関しても同様の状況にある。

 

普通に考えてこれは大問題だと思うのだが、残念ながら、会計基準を急ピッチで作る感じもしないし、なんなら、「本当に作る必要ってあるんでしょうか?」的な弱腰なペーパーが出てくる始末。

これまで、法律や税務の陰に隠れて、議論されてこなかった会計が日本のweb3を進める上でボトルネックになりそうな日が近そうだ。

とりあえず、来週衆議院の議員会館に行くことになったので、本件はしっかり現状をお伝えし、ルールを急ピッチで変えるためにはたらきかけていきたい。

 

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