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トークンを販売すると課税されるか?

8月24日夕方の読売新聞の報道。「自社が発行した暗号資産に関して、自社が保有する分については、時価評価課税を一時的に免除する」と趣旨。

金融庁、2023年度税制改正要望で暗号資産課税を見直しへ

 

これまでのルールは決算日に保有している暗号資産については、その保有目的に関わらず、すべて時価評価を行い、含み益相当に課税をするというもの。

税制改正の内容は、自社で発行した暗号資産を自社で保有している場合は時価評価課税の対象から除くというもの。すべて時価評価するという制度から自社保有分が緩和されたことにより、この部分については好意的に解釈されている状況。

一方で、読売新聞の報道を見ると、期末時における時価評価課税から除くものの、販売時の利益に対して課税すると記載されている。

つまり、暗号資産を販売したら課税をすることも含意していると捉えることができる。

トークン(FT and NFT)を発行することにより対価を得るという行為の経済実態はある種の資金調達のように捉えられがちだ。

ここで、少し資金調達について考えてみよう。

web2以前までの資金調達と言えば、銀行借入と株式発行によるものがメイン。銀行借入と株式発行と暗号資産(トークン)発行に関する課税関係を少し考えてみる。

 

銀行からお金を借りて借りたお金に税金が課されるか?株式を発行して、株主から払い込みを受けたお金に税金が課されるか?

いずれもNOである。

一方で、暗号資産を発行して、購入者から払い込みを受けた財産に税金が課さられるか?

(読売新聞の報道ベースでは)答えはYESである。

 

そもそも税金とはなぜ課されるのか?

この問いに対する答えを乱暴に言うと、「儲かっているから、その儲けには税金を課すね!」というのが国のロジック。

では、これをあてはめてみよう。

銀行からの借入はいずれ返さなければならない。したがって、銀行から借りたことによりお金は手許にあるが、別に儲かっているわけではない。よって税金は課されない。

株式を発行はどうだろう?

株主から払い込みを受けたお金は手許にある。銀行借入と違って返さなくてよい。でも、、「会社とは誰のものなのか?」という手垢のついた問いを思い出してほしい。道義的道徳的な観点はさておき、法律上は会社は株主のものである。すく必ず権利義務という観点では。

よって、株主から払い込みを受けたお金は会社のものであると同時に、会社の所有者である株主のものでもある。という前提を踏まえると、株主から拠出を受けたお金は儲かったと言えるだろうか?

答えはNOだろう。株主からすると自分のお金を自分が(少なくても部分的には)所有している会社の財布に移しただけだからだ。

 

以上を踏まえて、暗号資産の発行を検討してみよう。

暗号資産を販売した場合、

暗号資産購入者に対して、銀行借入のようにお金を返す必要はあるだろうか?

=>NO

暗号資産購入者は株式会社の所有者であろうか?暗号資産購入者の財布から自身が保有してい別の財布にお金を移しただけといえるだろうか?

=>NO

以上より、他の資金調達とは権利義務関係が構造的に異なることが分かる。

つまり、暗号資産の販売は経済的な実態は、確かに資金調達的な側面はあるものの、

「暗号資産の販売対価を返さなくてもいい」、

「暗号資産販売と株式会社発行とは全く異なる行為である。また、購入者の視点でみたときに、暗号資産購入者と株式会社の株主の権利義務は根本的に異なる」、

という2つの事実を踏まえると、暗号資産を販売しているんだから「儲けてると言えるよね?だったら課税してよ!」というのが現行の会社制度を前提にした法人税法の整理ではないだろうか?

なぜなら、会社は実際に暗号資産を販売して財を得ており、それは返す必要がなく、会社自身が自社の判断で好き勝手に使っていいのだから、暗号資産を販売した時点で儲かっている認定されるから。

 

「暗号資産の販売は資金調達的な税金を課すのはおかしいだろう!!」という批判ももっともな気がしますが、これは理屈の上では通らないだろうなと思っています。

結論は、、、トークン販売は課税される。

 

では、「本税制改正がきっかけで日本のスタートアップは日本に残るか??」という政府の目的がどれほど達成されるか?という点については、僕は懐疑的だったりします。

 

最後にディスクレーマーですが、、8月24日の読売新聞の報道ベースで、現行の会社制度における法人課税制度を下敷きに僕が考えた1つの仮説にすぎないため、僕の理解の誤りや、報道内容そのものに誤りがあることも想定されますので、鵜呑みにしないようにしてください。

じゃあ、なんでこのブログを書いたかというと、、

8月25日現在において、金融庁からも経産省からも税制改正要望もリリースされておりませんし、これから秋にかけて財務省との間での税制改正の議論を詰めていく中で、よりweb3スタートアップが使いやすい税制になるように議論が進展することを強く期待しているからです。

 

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